Berry in Lake ライトノベル含む読書感想など

ライトノベル含む読書やマンガの感想・レビューもどきなど

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

≪ バトン | 文章の読み 1 ≫

文章の読み 2

 前回の続き。

 ワーキングメモリのお話と、既知の情報の利用というのをちょこっと書きました。この辺りはどう記憶してそれをどう利用するかというところですが、次に「何を記憶するのか」という点があります。それが記憶表象というやつです。

 またも長文。


3.読み目的と記憶表象

 表象つーのはrepresentationの訳語として決められてる語で、意識しているあるイメージの対象をそんなふうに呼んでいるだけです。人が文章を読むとき、その記憶は3つの表象に分けられるとして実験を行った研究があります。Schmalhofer & Glavanov(1986)です。ちょい古いかしらん。

  • 逐語的表象(verbatim)
  • 命題的表象(propositional)
  • 状況的表象(situational)

 逐語的表象は字面通りの文章そのものです。

「ニヒリズムでは、最大の力が最大の空虚と組み合わされ、最大の能力が何のためのものかについての最大の無知と組み合わされている」。人間が創造した科学技術が人間の行為の性質を根本的に変えてしまい、際限なき自然破壊や人間性疎外の状況を生み出してしまっている。

 みたいなもの。これはすぐに忘却されます。本を読んで内容を覚えていても、その文章を頭からそらんじることができないことから経験的にわかりやすいかと思います。

 命題的表象は文章の意味の表象です。その文章自体が表す意味のことで、これはパラフレーズしても意味が通っていればいい、というもの。

「ニヒリズムにおいては科学技術を金儲けに直結させ、人間がなすべきことやその力に気づかない。その結果自然破壊を始め道徳心の破壊が進行している」

 みたいな理解。

 状況的表象ってのは一番複雑で、その文章が表す固有の領域についての知識から構成される。これについては具体的に説明すること自体が難しいです。

 命題的表象と状況的表象の違いについて言えば、前者は「文章を要約する」ためのその文章そのものの知識です。後者が「文章に書いてあることを学習する」ことによる書かれた内容に関する知識にあたります。この2つを分けたことがすげーとこです。まあそれ以前に文章でなくて対話場面の研究でそういう発想はあったのだけど。

 SchmalhoferとGlavanovは、実用されていない研究用の人工言語であるlispというプログラム言語のテキストを用いて実験を行いました。被験者の半数には「このマニュアルを後で要約してもらう」と教示し、もう半数には「このマニュアルを読んだ後、lispによるプログラムを実践してもらう」と教示したのです。

 この後、その文章をどれだけ、かつ「どのように」記憶しているか調べました。すなわち、被験者が保持している記憶表象を詳しく調べるテストを行いました。テストの方法と結果は省きますが、要約を教示された被験者は命題的表象を、実践を教示された被験者は状況的表象をより強く保持していたことがわかりました。逐語的表象はほぼ忘却されてます。

 このことからわかるのは、文章の読み目的によって、文章の理解のしかたに違いがあるということです。おそらく要約群と実践群では、本当にlispによるプログラミングをやらせた場合成績に差が出ると思います。これ実験ではやっていないのですが、要約群はほとんど実践できないはずです。

 さて読解力という話に戻りましょうか。ここで「読解力」というタームが揺らぎます。「その文章を読解する」ことと、「その文章が表す領域の知識を理解する」ことという2つの読解力があることになります。

 こと状況的表象に関して言えば、これはその文章についての記憶だけから構成されるわけではありません。初めて目にする情報でない限り、自分の知っている領域固有の知識と、書かれていることとを相互作用させながら記憶表象を構成していく、つまり読解していくことになります。

 とかく、文章を読み取って血となし肉となし、吸収するのが状況的表象の構成ってことになります。

 一方で、命題的表象はその文章が何を言っているのか、文章のこの部分があの部分とどう関係しているのか、というようなまとめ方です。マクロでもありミクロでもあり。

 中学か高校くらいの頃、他の成績はいいんだけど現代文だけは苦手、みたいな人がいたもんです。そういう場合、状況的表象を作るのはうまいけど、命題的表象を作るのが苦手だったのかも知れません。

4.読解力ってなんぞ

 読解力ということについてもう少し、前回のワーキングメモリの話とからめてみます。WMは容量が制限されていますから、なるべく余計なことは省いてすっきりさせながら文章を読まないとパンクしてしまいます。

 読み目的に応じて記憶表象が異なるということに鑑みて、読み目的が錯綜すると記憶の整理にあたって非効率的ということになりそうです。

 同じ文章内でも、読み目的は必ずしも一定でないこともありましょう。たとえば、文章中である概念が説明されている。それを理解するには前後のコンテクストから判断しなくてはいけない。ここでひとつこの概念を理解するという読み目的が発生する場合、ミクロな命題的な記憶が作られると考えることができる。ここでこの概念について既知の情報に照らして吟味し、自分の知識として吸収すれば状況的表象が作られていることになる。またこの概念をキーとして文章が次の話題に展開されていくのなら、これを読み解くには命題的表象を構築しなければならない。

 よくできた文章ってのはそもそも書かれている時点でそんなふうだから、読解にあたってもそういうもんじゃないでしょうか。文章が順序立てて書いてある以上、言語化するとあほみたいな話だけど、わからないことを放っておかないとか、そういうレベルのことの積み重ねが読解力をひとつ大きく規定しているように思います。

 3.で出てきた記憶表象を中心に考えれば、読解力とは、

  1. 逐語レベル
  2. 意味レベル
  3. 状況的表象のレベル

 の3つで考えることができるでありましょう。逐語レベルとは、この単語がどういう意味かがわかるかどうかという、辞書を引けば済むレベル。

 意味レベルとは、ある部分がこの文章でいうところの、何を指してどう連関しているのかを追うことができ、ある文章のまとまりが何を言っているのかわかるということ。

 状況的表象のレベルは、書かれていることを既知の情報と照らしたり、知らない領域のことを自分なりにかみ砕いて知識として身につけることができるということ。

 これらを念頭に、まず何から理解すべきなのか錯綜せず順序立てて考えられることと、特に2,3においてワーキングメモリの内容を最適化しながら効率よくまとめられるということが読みの上手さといえるのではないでしょうか。それを訓練する方法があれば読解力を向上させることができそうです。

 本を読むという行為は知識を増やします。一見関係なさそうな分野の本でも無意識のレベルで検索可能性を増すことになるので、ひとつの概念の処理に対する反応が豊かになると考えられます。

 たとえば「青春」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。私はある本を読んで以来、青春という言葉に対するイメージが少し変わりました。これはこういう青春もあるのだなあという私の感傷的経験からきています。これはまた機会があれば。というか近いうちに。とまれ、このようなともすれば個人の想像力の違いと片づけられてしまいがちなことも、ある情報に対する反応の豊かさという意味では読解レベルの深浅とも言えるでありましょう。この点で本を読むことは効果的なように思います。ただ、それだけでは十分でないでしょう。

 個人的には読むことよりも書くことのほうが、読みに強くなると思います。論文を読むなら論文法を学んで書くのが一番論文の読みに近づけますし、遊びでも小説を書くという勉強を始めてから読み方は少なくとも変わりましたね。それがいい方向かはわかりませんが。日記でも何でも自分の考えを順序立てて、論理的にアウトプットしてみるとかすれば頭の体操くらいにはなりましょう。

 私くらいいい加減に文章を書いているとそうとも限りませんが、世に出ている金を払って読む文章のだいたいは、無意味に書きつづっているわけではないでありましょう。なので、なぜこの部分が書かれたのか、その意味は必ずあるわけで、それが意外と書き手の視点から見てやるとわかってくるものです。まあどの部分が要らん文なのか判断するのも読解力でありましょう。

 文章を要約してみる、という文章の書き訓練があります。これは命題的表象を構築する訓練といえます。こういうのも効果的かも知れませんね。一見読むということについては遠回りに見える方法が、たぶん効果的なのではないかと。

 ちなみに私は要約ということが大の苦手であります。これだけのことを書くのにやたらめっぽう長文を書くこと自体が私の文章力と論理能力のなさを雄弁にして過分に語っているので、これ以上恥をさらすのはやめにして、この辺でやめておきたいと思います。

≪ バトン | 文章の読み 1 ≫

コメント

コメントの投稿








いちるにだけ見せる

トラックバック

http://lilli1.blog98.fc2.com/tb.php/125-c3675d9b

 | HOME | 

秋涼いちる

 ライトノベルから漫画から、一般小説、新書、果ては辞典までおよそ本の形をしたものなら何でも読む。

→ はじめまして

→ pixiv

RSS このブログのRSSを取得する

あわせて読みたいブログパーツ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。