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[ラノベ] イリヤの空、UFOの夏 秋山瑞人

 『イリヤの空、UFOの夏』1~4 秋山瑞人、電撃文庫。

 電撃文庫の誇る名作。SF。

 イニシエーションがテーマなのかな。全体的な構成としても、そこかしこの小さな設定にしても「境界」とか、それを乗り越えるといった展開が見られる。

 三巻の中盤くらいから一気に雲行きが怪しくなった、物語が急転した、と読者は思うだろう。それまでのコミカルな感じが一転する。ある人は鬱展開というかもしれないし、あるいは読み終わって本を壁に投げつけた、と感想する。

 しかし物語は何も変化などしていない。ただ非日常が薄皮一枚の危うさで見せかけの安穏の傍にあり続けただけであり、巨大な、呼びたければ運命とでも呼ぶがいい、人ひとりの小さすぎる手には負えない、もう誰にも止められない流れがあっただけである。それから目をそらしていたというだけの話。この時点での視点が「榎本」という距離に保たれているのは秋山瑞人の仕掛けたトリックだ。

 目をそらしたかった。浅羽は目の前にある大きすぎる何ものかへと一歩踏み出す勇気が無くて、それを罪だと思う程度にやさしくて、わかっていながら失敗を繰り返す程度に等身大の一般人だ。誰が浅羽を責められるだろう。読者は見かけの平穏を遠目から一緒になって笑っていたのではないのか。後半への落差は明らかに意図的だ。

 浅羽は一歩を踏み出す。そこで物語は終わらない。……これが『猫の地球儀』でも見せた秋山瑞人の凄いところであるのだが。

 浅羽は伊里野と一緒に運命から逃げ出す選択をした。では終わらないのである。浅羽は伊里野の小さい肩に重すぎる荷が載せられていることを呪う。「なぜ伊里野が」。覚悟は本物だ。トイレで自分の首にカッターを当てるシーンは息をのんだ。言うまでもない秋山瑞人の筆力と、迫力を演出した浅羽の意志のためだ。

 だがどこまでも浅羽は一般人だった。いや、浅羽が「スーパーマンのような人」と評する水前寺さえその前に屈した。浅羽は巨大すぎるそれを自分が背負う番になって、まさにその重さに耐えきれなかった。「なぜぼくが」と思ってしまった。それは絶対にしてはいけない呪うべき問いだったし、避けることのできない現実だった。過ちを繰り返す。

 逆境における根拠のない少年マンガ的主人公力の爆発は起こらなかった。秋山はそんなもの描かない。愛があれば云々といったロマンチシズムなど微塵も信じない。ただ運命の凄惨さを見せつけ無力を思い知らせるだけの悲観主義でもない。“鬱展開”を挿入してお涙頂戴しようという上っ面の悲劇などではもちろんあり得ない。

 猫の地球儀の読者は知っている。そうでなければ思い知るだろう。秋山瑞人が書くのは必然だ。自らの生み出した世界観を裏切らない。浅羽はもう一度足を踏み出す。夏は終わる。


 いやー、ほんとすげーわこの人。イリヤの空ってだいぶ売れただけに色々レビューも探せばあるんだけど、私にはどれもしっくりこなかった。

 私はセカイ系という言葉が死ぬほど嫌いで、web2.0くらいの意味しかこもってないうんこワードだと思っている、あるいはセカイ系だろうが厨二だろうが童貞小説だろうが面白けりゃあいいと思っているのですが、さておき。ここまでやったラノベって他にあるだろうか。あるならぜひ教えて欲しい。

 次は何を読もうかな。

関連タグ: 読書ライトノベルラノベ秋山瑞人

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